TEL
肺高血圧症(はいこうけつあつしょう) | 加古川中央市民病院
ページトップ

DISEASE

肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)

ホーム 心臓血管センター特設サイトトップ 肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)

肺高血圧症について

肺高血圧症は、あまり聞き慣れない言葉かと思います。通常上肢で測定する血圧が高い場合に「高血圧症」といわれますが、肺高血圧症とはまた別の状態になります。肺高血圧症を理解していただくために、全身循環の話をします。図1は体内での血液の循環を簡略化したイラストです。全身を巡った血液は、静脈と呼ばれる血管から『大静脈』に集まり、心臓の『右心房』に返ってきます。右心房に貯められた血液は、『右心室』から送り出されて肺動脈を通じ肺に届けられます。肺では『毛細血管』で二酸化炭素を体外に出して酸素が取り入れられ、酸素をたくさん含んだ血液が『肺静脈』を通じて『左心房』に集まります。左心房に貯められた血液は『左心室』を通じて全身(脳や肝臓、腎臓などの臓器、筋肉など)へつながる動脈に送り出され、そしてまた、全身で酸素が消費され、二酸化炭素を多く含んだ血液が静脈を通して心臓に返ってくる。これが全身の循環です。

図1

心臓からは「大動脈」と「肺動脈」という2つの動脈が出ています。大動脈は全身に、肺動脈は肺に血液を送るための血管です。肺高血圧症は肺動脈の流れが様々な原因疾患により悪くなり圧力が高くなる状態のことをいいます。

肺高血圧症の原因

肺動脈の圧力が高くなる原因として、大きく5つに分類されています。

1群肺動脈性肺高血圧症
肺動脈自体に問題があり、肺細動脈内膜の肥厚により内腔が狭小化します。遺伝、膠原病などを原因とする場合もあれば、原因がわからない場合(特発性)もあります。
2群左心不全に伴う肺高血圧症
左房、左室など左心系の問題(狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症など)により、正常に全身へ血液を送り出せない場合、血液が交通渋滞を起こし、肺静脈、肺動脈と順にうっ滞することになります。その結果、肺動脈の圧力が上昇します。
3群肺疾患、低酸素に伴う肺高血圧症
通常、肺は非常に予備能力の高い臓器ですが、COPD、間質性肺炎などにより、肺が高度に障害された場合、肺高血圧症をきたします。
4群慢性血栓塞栓性肺高血圧症
肺動脈の中に器質化した(硬くなった)血栓がつまり、肺の血流が悪くなるために肺高血圧になります。
5群その他の全身疾患に伴う肺高血圧症

症状

人によって症状は違いますが、多くの患者さんに起こる症状としては息切れや倦怠感などがあります。前は休まずにできていた階段や坂を上ることができなくなったり、同世代の人と比べて早く息切れすると感じる場合、肺高血圧の可能性があります。病状が進行すると、浮腫や失神、喀血などが出現することもあります。

検査

健康診断やクリニックで行われるレントゲン、心電図、血液検査などから発見することは難しく、まれな病気のため診断までに時間がかかることもあります。 症状、身体所見や各種検査(レントゲン、心電図、血液検査など)から肺高血圧症が疑われた際には心臓の超音波検査を行います。

心臓超音波検査

この検査で肺高血圧症の可能性が高いと判断されれば、循環器内科の専門病院に紹介され、心臓カテーテル検査(右心カテーテル検査)で直接肺動脈の圧力を測定し、肺高血圧症と診断します。

右心カテーテル検査

治療方法

肺高血圧症をきたす原因によって治療方法は異なります。
肺高血圧症の原因の2群(左心疾患に伴う肺高血圧症)と3群(肺疾患、低酸素に伴う肺高血圧症)は、それぞれ左心疾患、肺疾患の治療が優先されます。 ここでは、肺高血圧症として専門的治療を要する1群と4群の治療に関して説明します。

1群(肺動脈性肺高血圧症)

肉眼では見えないほどの小さな肺動脈に内腔の狭小化が起こることで発症します。
発見が難しく、比較的若い人にも発症します。十分な治療を受けないと数年以内に命を落とす可能性のある難病であり、厚生労働省の指定難病にも指定されています。
近年は治療薬の進歩により、治療成績が大幅に改善しています。肺血管を拡張する特殊な治療薬のため、肺動脈性肺高血圧症が疑われた時点で早期に専門機関に受診し、しっかりと治療を受けることで予後の改善が期待できます。

4群(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)

すでに器質化してしまった血栓は薬で溶かすことはできないため、外科的に血栓を取り除く治療(肺動脈血栓内膜摘除術:PEA)や、手術で取り切れないような末梢の血栓に対してはカテーテル治療(経皮的バルーン肺動脈形成術:BPA)で肺動脈をバルーンで拡張することにより、根本的な治療を行います。治療方法に関しては、病変形態や患者背景により検討します。
これらの侵襲的治療はより高度な専門機関での治療が必要となるため、この疾患に対する治療を希望される際には、近隣専門施設へ紹介します。 また、肺動脈性肺高血圧症と同様に肺血管拡張薬の有効性もある程度認められており、一部の薬剤は保険適応されています。ただし、内服薬のみで完治を目指すことは困難のためPEAやBPAを受けることを推奨いたします。

地域医療機関の先生へ

当院では毎週火曜日に肺高血圧症専門外来(担当:松岡庸一郎)を行っています。
肺高血圧は診断が難しい病気ですが、早期診断により患者さんの予後は大きく改善します。
『心不全、肺疾患では説明できない息切れ』、『心臓超音波検査にてTRPG35mmHg以上』の所見がありましたら積極的にご紹介いただけますと幸いです。
なお、息切れの原因として自施設で心疾患、肺疾患の除外が困難の際にも同外来で鑑別まで行いますので、お気軽にご紹介ください。

スタッフ

専門分野

循環器疾患全般
肺高血圧症

学会専門医・認定医

日本内科学会認定内科医
日本心血管インターベンション治療学会CVIT認定医