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大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう) | 加古川中央市民病院
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DISEASE

大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)

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大動脈瘤について

大動脈瘤とは動脈硬化をはじめとしたなんらかの原因で大動脈の一部が膨張・肥大化する病気です。大動脈瘤のできた場所によって胸部大動脈瘤、胸部と腹部に連続する胸腹部大動脈瘤、腹部では腹部大動脈瘤と呼ばれます。胸部大動脈では直径4cm、腹部大動脈では直径3cmを超えると大動脈瘤と診断します。

症状

多くが無症状で、画像検査(CT検査、レントゲン写真、MRI検査)で偶然発見され、診断されることが多いです。しかし、大動脈瘤の場所や大きさによっては症状を感じることがあります。胸部大動脈瘤では咳や息切れ、飲み込み(嚥下)時の症状(嚥下痛、嚥下困難),嗄声(声が枯れる)、腹部大動脈瘤では腹部拍動感や腹痛、腹部不快感を自覚することがあります。どの大動脈瘤でも破裂した場合、激烈な痛みがあることが多く、破裂の仕方で吐血(血を消化管から吐くこと)、下血、喀血・血痰(気管から血をはくこと)を合併することがあります。どのような症状でも大動脈瘤が破裂した場合には、命が危険にさらされている状態です。緊急で対応をしなければ、救命できない可能性が非常に高いです。

検査

診断や治療法を考えるうえで、CT検査は非常に有効で、不可欠な検査です。大動脈瘤の大きさとその広がり、瘤とまわりの臓器との位置関係などさまざまな情報を得ることができます。

CT検査

CT検査

Stanford A型急性大動脈解離の造影CT検査画像
上行大動脈(黄矢印)に大動脈解離が及んでいることがわかります。

治療方法

治療は、肥大化した瘤が破裂し生命に危険を及ぼすことを防ぐために行います。破裂する危険性が低い大きさであれば、日常生活に気を配り、定期的に専門医を受診することが重要です。大動脈瘤径(大きさ)は手術を行うかを決めるうえで重要です。一般的に胸部大動脈瘤で55~60 mm以上、腹部大動脈瘤で50~55 mm以上になると手術を行ったほうがよいと言われています。小さい場合でも、大きくなるスピードが速い場合や、胸痛や腹痛などの症状があれば、手術を行うこともあります。大動脈瘤に対して、高血圧の薬物治療により大動脈瘤の拡大を遅くすることができる可能性はありますが、大動脈瘤を治すことのできる薬物はありません。そのため、破裂を予防するためには手術が必要です。

胸部大動脈瘤も腹部大動脈瘤も大きく分けて、2種類の手術方法があります。人工血管置換術とステントグラフト内挿術です。大動脈瘤に対するこの二つの治療法は、大動脈瘤を時限爆弾に例えるならば、人工血管置換術は体内からその爆弾を取り除く手術で、ステントグラフト内挿術は時限爆弾の時計を止める手術です。

人工血管置換術

従来から行われている手術方法で、大動脈瘤を切除して人工血管に置き換える手術です

手術前

手術前

胸部大動脈瘤

手術後

手術後

人工血管置換術後

胸部大動脈瘤の場合、多くは体外循環(人工心肺装置)を用います。場所によっては手術の手順のなかで、十分な血流を保つことができないこともあり、低体温法や臓器潅流のための特別な方法を用いることもあります。人工血管置換術には長い歴史があり、手術後の経過や起こりうる合併症などについてデータの蓄積があります。大動脈瘤の場所によっては体の負担が小さくない手術ですが、様々な改良が加えられて、安全性の高い治療になっています。手術の難しさと病態は患者さんにより異なります。どのような手術を行うのか、どの程度の危険性を伴うのかについて、一人ひとり十分に検討してから説明し、理解していただくように心がけています。人工血管置換術により大動脈瘤はなくなるため、追加の治療が必要になることはあまりありませんが、他の大動脈瘤ができたり既にあったものが大きくなることがあります。術後も定期的な経過観察が必要です。

ステントグラフト内挿術

ステントグラフトはステントと言われるバネ状の金属を取り付けた人工血管で、カテーテルの中に収納して大動脈内に挿入し、大動脈瘤の前後を含めた大動脈内で広げます。大動脈瘤内の血流はステントグラフトの中を通るため、ステントグラフトの外側(大動脈瘤の内側)の血液は固まります。これにより大動脈瘤が縮小しなくても、拡大が進行しなければ破裂の危険性はなくなります。大動脈瘤は存在しますが、破裂の心配はなくなります。これが時限爆弾の時計を止める手術という意味です。ステントグラフトは開胸することなく大動脈内に挿入することができるため、体の負担の小さい手術です

手術前

手術前

腹部大動脈瘤

手術後

手術後

腹部大動脈ステントグラフト内挿術後

大動脈瘤の部位によっては、ステントグラフト内挿術とは別に血行再建術を必要とする場合もありますが(図)、開胸、開腹手術と比較しても負担は小さいです。

手術前

手術前

胸部大動脈瘤術前

手術後

手術後

胸部大動脈ステントグラフト内挿術+頸部動脈バイパス術後

上記のような人工血管置換術とステントグラフト内挿術を組み合わせたような手術です。大動脈瘤の部位と大きさ、周囲の大動脈の性状、大きさを十分に検討し、通常のステントグラフト内挿術が不適切な形の場合に行うことが多い手術です。急性大動脈解離の症例で大きな効果を発揮することが多い手術ですが、胸部大動脈瘤に対する手術でも行うことがあります。当院では2016年からオープンステントグラフト(図)の使用が始まりました。

2023年2月からは、人工血管とオープンステントグラフトが一体となった製品(図)が導入され、大動脈瘤手術にも多く使用するようになりました。これにより、従来の人工血管置換術よりも手術時間を短縮することで、患者さんの体の負担を軽減することができます。

出典:テルモ株式会社 Thoraflex Hybrid

スタッフ

心臓血管外科

専門分野

心臓血管外科全般

学会専門医・認定医

日本外科学会外科専門医・指導医
心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科専門医
心臓血管外科専門医認定機構修練指導医
日本胸部外科学会評議員
関西胸部外科学会評議員
胸部ステントグラフト指導医(TAG/Relay/TX-2/Valiant/Najuta)
腹部ステントグラフト指導医(Excluder/Zenith/Endurant/AFX/Aorfix)
厚生労働省認定臨床研修指導医
神戸大学医学部臨床教授
医学博士

専門分野

心臓血管外科全般

学会専門医・認定医

日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会 専門医
心臓血管外科専門医認定機構心臓血管外科修練指導医
胸部ステントグラフト指導医(VALIANT Captivia/Navion)
胸部ステントグラフト実施医(Relay Plus/Pro)
腹部ステントグラフト指導医(Endurant/TREO)
腹部ステントグラフト実施医(GoreExcluder/AFX)
"下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会
下肢静脈瘤に対する血管内治療 指導医"
医学博士