大腸は結腸と直腸から構成されます。大腸がんの多くは、加齢や生活習慣や環境因子(運動不足、高脂肪食、低繊維食の摂取など)などの影響を受けて、腺腫という良性のポリープが形成されたものががん化して発生するものとされ、これらは「散発性大腸がん」と呼ばれています。一方、生まれながらにある遺伝子の一部に異常があり、それが原因で大腸がんが発生することがあり、これらは「遺伝性大腸がん」と呼ばれ、大腸がんの5%程度とされています。戦後の欧米化による食生活の変化に伴い、日本でも罹患率が急激に増加している疾患です。大腸がん検診を正しく受診し、早期に発見することが大切です。検査は、「40歳以上の人は便潜血検査を年に1回は受ける」ことをおすすめします。また「50歳になったら一度は大腸内視鏡検査を受ける」ことが検査の目安としてすすめられます。
大腸の各部名称
大腸壁の構造
早期の段階では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなります。代表的な症状として、便に血が混じる(血便や下血)、便の表面に血液が付着するなどがあります。がんが進行すると、慢性的に出血することによる貧血の症状(めまいなど)があらわれたり、腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、便が残る感じがする、おなかが張るなどの症状が起こったりすることがあります。さらに進行すると腸閉塞となり、便は出なくなり、腹痛や嘔吐などの症状が起こります。しかし、右側結腸(盲腸/上行結腸/横行結腸)のがんは、大きくなっても比較的症状が出にくいとされています。
大腸がん検診で便潜血検査が陽性の場合や、便秘や下痢、血便などの大腸がんを疑う症状がある場合には、肛門から内視鏡を入れて大腸の中を詳しく観察する「大腸内視鏡(大腸カメラ)検査」を行います。がんを疑う病変が見つかった場合には、内視鏡の先端から出した鉗子という道具で病変の一部を採取し(生検)、顕微鏡で組織を調べます。
大腸内視鏡(大腸カメラ)検査
患者さんの希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、医師と話し合って決めていきます。早期のがんは可能であれば内視鏡治療が行われます。切除したがんをより詳しく調べることで、外科的な手術加療が追加で必要になる場合もあります。進行したがんや再発リスクが高いがんの場合は、病状に応じて手術や薬物療法などを組み合わせて治療を行います。手術の前に薬物療法を行い、がんを小さくしてから切除を行う場合もあります。
大腸がんの深達度
Tis | がんが粘膜内にとどまっている |
T1 | がんが粘膜下層にとどまっている |
T2 | がんが固有筋層にとどまっている |
T3 | がんが固有筋層を超えているが、漿膜下層または外膜までにとどまっている |
T4a | がんが漿膜を超えた深さに達する |
T4b | がんが大腸周囲の他臓器にまで達する |
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
肛門から大腸内視鏡を挿入し、内視鏡の先端の穴から専用の器具を出してがんを切り取ります。病変の大きさによって、内視鏡での切除方法が異なります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
EMRで切除が困難な大きな病変に対して
手術の方法として開腹手術・腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術の3種類があります。一概に開腹手術より腹腔鏡下手術、腹腔鏡下手術よりロボット支援下手術のほうが優れているということはなく、患者さんの状態、がんの状態に応じ、最適な術式を適応致します。
開腹手術について
腹部手術既往などによる高度癒着が予想される場合や、腫瘍の拡がりが大きい場合、腸閉塞状態の場合などには、開腹手術が選択されます。開腹手術であること自体は入院期間を延長するものではありません。
腹腔鏡下手術について
炭酸ガスで腹部を膨らませて腹腔鏡で観察しながら、小さな穴から器具を入れて手術を行います。通常の開腹手術より手術時間は長くなる場合もありますが、傷口が小さく、術後の疼痛も少なく、体の負担が少ない手術法です。それぞれの患者さんの病状に応じて、最善の治療法を患者さんご自身と医師が一緒に考えていく必要があり、腹腔鏡手術はその治療法のひとつとして挙げられます。
ロボット支援下手術について
前述の腹腔鏡下手術同様、お腹に開けた小さな穴に鉗子と呼ばれる器具を入れて手術を行いますが、腹腔鏡下手術と大きく異なるところは、その器具を人が把持するのではなく、ロボットに把持させるということです。ロボットを介することで手振れのない、より精緻な手術が可能とされています。
結腸がんの手術について
がんの位置からある程度離して腸管を切除するとともに、腫瘍を栄養としている血管に沿ってリンパ節も同時に切除します。リンパ節を切除する範囲はがんの進行度により変わります。再建法は手縫いによる吻合、器械吻合がありそれぞれの切除部位に応じて行われます。
結腸右半切除術
結腸部分切除術
横行結腸切除術
結腸部分切除術
直腸がんの手術について
直腸では、がんのできた位置によって2種類の手術法が選択されます。がんが肛門から離れている場合は肛門を残す手術、肛門に近い場所にできたがんでは、肛門も一緒に切除し、人工肛門(ストマ)を造設する手術を行う必要があります。また、肛門を残す手術が可能な場合でも、一時的な人工肛門の造設が必要とる場合があります。
括約筋温存手術(前方切除術)
腹会陰式直腸切断術
直腸がんの骨盤内の再発を抑える目的で行う「補助放射線治療」と、痛みや吐き気、嘔吐、めまいなどのがんの再発や転移による症状を和らげることを目的とした「緩和的放射線治療」があります。補助放射線治療は手術前に行うことがあり(術前照射)、多くの場合、薬物療法と一緒に行います。
様々な要因で手術治療が難しい場合や、手術によりがんを切除できたとしてもリンパ節転移が認められた場合には化学療法によって治療を行います。また、術前に化学療法を行い腫瘍を縮小させた上で手術をするに臨む場合もあります。薬物療法で使用する薬の組み合わせは複数あり、どの種類の薬を使うかは、治療の目的、がんの状態や臓器の機能、副作用、点滴や入院の必要性や通院頻度などについて、患者さんと医師が話し合って決めていきます。
消化器外科
日本外科学会外科専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本乳がん検診精度管理中央機構
検診マンモグラフィ読影認定医
厚生労働省認定臨床研修指導医
医学博士
外科一般
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
日本静脈経腸栄養学会TNTコース修了
厚生労働省認定臨床研修指導医
医学博士