胃がんは、胃の内側にある粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。がんがより深く進むと胃の外側まで達し、近くにある大腸や膵臓、横隔膜、肝臓などにも直接広がっていきます。また、がん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って移動し、胃から離れた別の臓器で増えることもあります。
早期の段階では自覚症状はほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。代表的な症状は胃の痛み・不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などがあります。また、がんから出血することによって、貧血や、黒い便(血便)が出ることもあります。食事がつかえる・体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性もあります。しかし、これらは胃がんだけではなく、胃炎や胃潰瘍でも起こる症状です。そのため、胃炎や胃潰瘍などで内視鏡検査を受けたときに、偶然がんが見つかることもあります。
胃がんが疑われた場合には「がんかどうかを確定するための検査」を受けます。病変の有無や場所を調べるために、内視鏡検査やX線検査(バリウム検査)などが行われます。内視鏡検査で胃の内部を見て、がんが疑われるところがあると、その部分をつまんで取り、病理検査で胃がんかどうかを確定するための生検が行われます。
内視鏡検査
X線検査(バリウム検査)
がんであることが確定した場合には、治療方針を決めるために、「がんの進行度(進み具合)を診断する検査」を受けます。がんの深さや、胃から離れた臓器やリンパ節などへの転移、胃に隣り合った膵臓・肝臓・腸などの臓器への広がりを、造影剤を使ったCT検査・MRI検査やPET検査で調べます。また、全身麻酔をして審査腹腔鏡が行われることがあります。
治療方法は、がんの進行度やがんの性質、患者さんの希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、医師と話し合って決めていきます。胃以外の臓器やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は、内視鏡治療が中心です。がんが粘膜下層に達しているときは、手術を検討します。手術のあとに薬物療法を行うことがあります。
T1 | がんが粘膜、粘膜下層にとどまっている |
T1a | がんが粘膜層にとどまっている |
T1b | がんが粘膜下層にとどまっている |
T2 | がんが固有筋層に入り込んでいる、あるいは浸潤している |
T3 | がんが固有筋層を超えて漿膜下層に浸潤している |
T4a | がんが漿膜を超えて胃の表面にでている |
T4b | がんが胃の表面に出た上に、他の臓器にも広がっている |
口から内視鏡を挿入し、内視鏡の先端の穴から専用の器具を出してがんを切り取ります。病変の大きさによって、内視鏡での切除方法が異なります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
腹腔鏡下手術やロボット支援下手術について
お腹に5から12ミリメートルの小さな傷を5つだけつけて、細長い手術器具を入れて手術を行います。通常の開腹手術より手術時間は長くなりますが、傷口が小さく、術後の疼痛も少なく、体の負担が少ない手術法です。それぞれの患者さんの病状に応じて、最善の治療法を患者さんご自身と医師が一緒に考えていく必要があり、腹腔鏡手術はその治療法のひとつとして挙げられます。
腹腔鏡下手術
腹腔鏡下手術
ロボット支援下手術
開腹手術について
おなかの正中に縱に約20cm前後の傷を入れて開腹して手術を行います。
術式について
胃全摘術
胃の上部に発生した進行胃がんや、胃の下部でも大きな胃がんで残胃を1/3以上残すことが困難な場合に選択される手術方法です。胃の入口と出口を切離して、胃の全てを切除します。
幽門側胃切除術
胃の下部に発生した胃がんに対して行われる手術です。胃の2/3ほどを周囲のリンパ節とともに切除されます。
噴門側胃切除
胃の上部に発生したがんで早期のものや食道胃接合部癌に行われる手術です。胃の上部を周囲のリンパ節とともに切除します。
胃がんの薬物療法には、大きく分けて「手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法」と、手術後の再発予防を目的とする「術後補助化学療法」があります。なお、他臓器浸潤やリンパ節転移の状況によっては、手術の前に「術前化学療法」が行われる場合もあります。
外科一般
日本外科学会外科専門医・指導医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
日本食道学会食道科認定医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター
厚生労働省認定臨床研修指導医
外科一般
日本外科学会外科専門医
日本消化器外科学会消化器外科専門医
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
日本内視鏡外科学会技術認定医
日本外科代謝栄養学会 日本栄養治療学会認定 NST医師・歯科医師教育セミナー終了
医学博士