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#21日常に潜むガス(気体)の危険性

日常に潜む“見えない危険”には、ガス(気体)による事故や中毒があります。

無色・無臭で気づきにくいものも多く、私たちの身近な場所に潜んでいます。

今回は、救急医として37年間の経験の中で実際に遭遇したケースを紹介しながら、代表的なガス中毒についてお話しします。

一酸化炭素中毒について

不完全燃焼によって発生する一酸化炭素中毒は、冬場になると毎年のように耳にする事故の一つです。

初期症状としては頭痛が多いと言われていますが、冬場は風邪による頭痛や体調不良と勘違いされ、気づかれにくいという報告もあります。

また一酸化炭素は無色・無臭の気体で、自覚しにくい点が大きな危険です。暖房器具や火気を使用する際は、決して侮ることなく十分な換気を心がけることが重要です。

ケース1)炉端焼き店で消防職員が一酸化炭素中毒

一酸化炭素中毒は、知識・経験が豊富な消防職員であっても、気づかないうちに発症してしまう非常に危険な中毒です。

温泉や下水道に含まれる気体について

温泉には、硫化物泉や炭酸泉など、さまざまな気体を含む泉源があります。

その中でも、硫化物泉や硫化水素泉では、硫化水素という気体が発生しています。硫化水素は空気より重く、窪地・マンホール・地下・浴室・温泉の源泉付近など、低い場所にたまりやすく、腐った卵のような臭いが特徴。高濃度では嗅覚が麻痺し、臭いを感じなくなるため非常に危険です。

「ノックアウトガス」とも呼ばれ、吸入すると細胞内の電子伝達系、いわば細胞のエネルギー産生システムを阻害します。そのため、高濃度では数回吸い込んだだけで突然倒れ、呼吸停止や心停止に至ることもあります。

ちなみに、兵庫県の名湯・有馬温泉はお土産の「炭酸せんべい」が名物として知られる、炭酸泉として有名な温泉地です。


近年は温泉ブームが続き、とくに秘湯人気は高まっています。秘湯を訪れる際には、現地の注意書きをよく確認し、立ち入り禁止区域には決して入らないようにしましょう。

ケース2)某温泉郷で硫化水素中毒

窪地に滞留した硫化水素が原因で発症。ドクターヘリで搬送し一命を取り留めました。

ケース3)下水道管工事中の作業員が硫化水素中毒により亡くなる

下水道内では硫化水素を発生させる細菌が存在しており、こういった痛ましい労働災害は、現在なお発生しています。

二酸化炭素中毒について

地球温暖化の原因として知られる二酸化炭素ですが、その危険性は温暖化だけではありません。高濃度の二酸化炭素を吸入すると、酸欠状態に加え、二酸化炭素そのものの作用によって意識障害を起こし、突然倒れてしまうことがあります。

ケース4)地下駐車場で、炭酸ガス消化装置の誤作動により亡くなる

ケース5)軽ライトバンでドライアイス運搬中意識消失

通行人に発見され、救急搬送されました。

大量のドライアイスは、密閉空間に置かないようにしましょう。

ケース6)牧草を保管するサイロに農場主が転落

牧草は発酵の過程で二酸化炭素を発生させます。サイロの窓を開けた瞬間、高濃度の二酸化炭素に暴露され、意識を失って転落したようです。転落による重傷も負い、中毒と外傷の両方に対する治療が必要となりました。

塩素ガスについて

「混ぜるな危険」という表示を、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

カビ取り剤などの次亜塩素酸系漂白剤と、酸性洗剤(トイレ用洗剤など)を混ぜると、有毒な塩素ガスが発生します。

塩素ガスは非常に刺激性の強い気体で、吸入すると目や喉などの粘膜障害に加え、重症の場合には肺障害を引き起こすこともあります。

「混ぜるな危険」と表示されている製品は、絶対に酸性洗剤と混ぜないようにしてください。ちなみに、毒ガス兵器として最初に使われたのも塩素ガスであったと言われています。

火災現場で発生するガスについて

火災現場で発生するのは、不完全燃焼による一酸化炭素ばかりではありません。

近年では、化学繊維や石油系プラスチック、炭素繊維などを含む建材が多く使用されています。これらが燃焼すると、シアン化水素(青酸ガス)が発生することがあります。

火災で亡くなった方の血液を調査した報告では、近年一酸化炭素成分よりもシアン成分の影響が強く示唆されるケースが増えています。このように火災時には、一酸化炭素だけではなく、シアンガスにも注意が必要です。

救急科 科部長
佐藤 圭路

 

日常に潜むガスの危険は、決して他人事ではありません。こうした危険性について理解を深めていただき、日頃から身近に潜む危険がすぐそばにあるという認識をお持ちいただき、中毒にならないようご注意下さい。

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